top of page
  • ahedgehogchase

AIはBIの夢を見るわけではない

◉ベーシックインカムは本当に必要か

 人工知能(AI)、そしてロボティクスが発達した世界では、人間のする仕事が無くなっていき、失業率が高くなると予測されている。だから、ベーシックインカム(BI)を導入することで、職を失った人たちが生きていくのに最低限のお金を得られるように社会のルールを変えようという議論がされるようになってきた。このような議論はなされるべきだし、BIが本当に導入される世界が実現できれば、それは人類最大級の快挙かもしれない。でも、BIだけがあるべき姿なのだろうか?

 もしも、AIやロボットが生み出す富を一部の人たちが独占してしまった場合、BIは残りの人たちが生きていくために必要不可欠なシステムになるだろう。この状態で、BIの制度が整わない場合には、地獄絵図のような展開が待っているかも知れない。そして、BIの制度が整わない可能性は高い。このような抜本的な制度の改革はなかなか進まないのが世の常だからだ。

 しかし、幸いなことに21世紀は分散の時代に向かいつつある。あるいはシェアの時代と言った方が、馴染みがあるかも知れない。20世紀の中央集権型の時代から抜け出しつつあるこの時代、誰もがAIやロボットの能力にアクセスできるような仕組みを築いていくことはできるはずだ。AIの能力をグローバルな規模でシェアする世界を創り出すことができれば、豊かな生活を維持して人類は発展できるだろう。もしかしたら貧困の撲滅も夢ではなくなるかも知れない。とはいえ、僕はAIの能力へのアクセスだけでそれを成し得るとは思っていない。

◉エネルギーを分配する

 21世紀に重要な役割を担うのは、エネルギー・情報・交通だ(と、イーロン・マスクが言っていた)。というより、エネルギー・情報・交通のシェアがいかに行われるかにかかっていると僕は思っている。そして、この中で1番重要なエネルギーへの無料アクセスがBIを代替する道の1つだと僕は考えている。

 エネルギーが重要なのは、誰もが認めるところだろう。電気やガスが生活に必要不可欠というだけでなく、僕たちが食料を食べるのもエネルギーを得るためだ。食料もエネルギーなのだ。そして、エネルギーは情報の伝達、交通による人や物の移動にも関わる最もエッセンシャルな要素だ。もちろん、AIやロボットが動くためにもエネルギーは必要だ。

 では、BIではなく一定量のエネルギーに無料アクセスを目指すべきというのはなぜか。理由は3つある。1つ目の理由は、お金の価値が変動したとき、生活へのかなり大きいダメージを与えるのに対して、人が使うエネルギーの量はそれほど変わらないということだ。次に、2つ目の理由はエネルギーのコストは今後徐々に下がっていくことが見込まれること。将来的にはお金を支給するよりも財政的に安上がりになるだろう。そして最後の理由は、エネルギーの使い方は、お金の使い方よりも制約が大きいということだ。エネルギーはお金の代わりにはならない。だから無料でアクセスできるエネルギーを使ってお金を得ようとする工夫をするはずだ。AI全盛の時代でも、人間にできることはまだたくさん残されているだろうし、それによって生き甲斐を見出せる仕組みになっているのだ。

 でも、この様な仕組みは化石燃料や原子力に頼っている限りは築けないだろう。化石燃料や核燃料は生産される場所が限られており、そのような生産地は私企業に囲い込まれているため、それを無料でばら撒くことはなかなか考えにくい。これを成し遂げるにはローカルに入手可能な再生可能エネルギーをコミュニティー内、そしてコミュニティー同士ででシェアすることだろう。再生可能エネルギーならなぜ可能かというと、そのコストは今後劇的に下がっていくことが見込まれるからだ。例えば太陽光発電のコストは1年ごとに1割ずつ安価になっているという。これをスワンソンの法則という。これを元に計算すると2030年には今年(2017年)の約4分の1のコストに下がることが見込まれるということになる。そして将来的にはコストゼロに漸近していくだろう。だから僕はこのシナリオを絵空事だとは思っていない。

 ここまで、エネルギーへの無料アクセスについて書いてきたが、当然これだけで十分だとは思っていない。エネルギーを使う場所や、それを思った通りに使う手段がなければ、こんなことをしても全く意味がないからだ。分配の方法は決して容易ではないだろう。まだまだこのアイディアは荒削りなのだ。僕たちが望んでいるのは、あくまでセーフティーネットが働くということなので、それが機能する形で仕組みをデザインしていかなければならない。それについては、また取り上げたいと思っている。

閲覧数:4回0件のコメント
bottom of page