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Lesson 1. プロジェクトマネジメント §5 スパイラル型開発

スパイラル型開発のすゝめ  もう1つのやり方はスパイラル型開発だ。  君たちがやりがちな、よくある間違いは全体のプロジェクトに多くの時間を割いて失敗することだ。  スパイラル型開発は、アメリカ軍が軍備の購入時に犯してしまった失敗がもとになった用語だ。アメリカ軍はなんと10年間で1億ドルほどの予算を使い、機能しないモノを購入してしまったのだ。  スパイラル型開発という考え方は、こうだ。君たちがやるべきことは、プロジェクトの縮小版を完成させることだ。でも、それでいて完成形である(つまり、ちゃんと動作する)必要がある。そして、君たちはそれに少しずつ機能を追加して次の「完成形」を作り出す。これを繰り返す事で事で、少しずつ機能を充実させていくスパイラルを作り出すのだ。やがて、このスパイラルは完全版となる。  でも、機能を拡張する時に意識しなければならないのは、あくまでも、最終的に自分がプロジェクトのあるべき姿だと思う形に少しずつ近づけ続けようとすることだ。  例えば、この講座ではレーザーカットの課題を用意しているが、ありがちな失敗は、最終課題に使用する部品を全部一気に作ってしまうことだ。でも、組み立てる時に気がつくんだ。ジョイント部分がまずいってことに。  スパイラル型開発では、君たちは、まず、たった1つのジョイントしかないプロジェクトに取り組むべきなのだ。そのジョイントが正しく作られていることを確認したのち、次には例えば「顔」を作るプロジェクトに取り組むんだ。そうして、正しく作られた格好良い「顔」が出来上がる。そうやって、全体のプロジェクトを進めていくんだ。一気にやろうとしてはいけない。スパイラルに進めよう。  他の例を示そう。この講座では型を作って注型する実習を1週間かけてやる予定だ。ここで作ったゴム部品は修正できないし、注型後に型は壊れてしまう。だから、最初にどうでも良い小さな部品を作ってみて、全部うまくいくことを確認してから、大きい部品を注型するという段取りが良いんだ。  電子工作をするときに、この問題にぶち当たるだろう。君が作った電子機器が動かない場合、なぜかは分からないが、本当にただ動かないだけという現実を見ることになるだろう。それを修理する唯一の方法は、動くところを見つけて、それを除外して考えていくことだ。  他の方法は、確実に動く小さい部品から始めて、徐々に部品を足していくというやり方だ。そのように進めても、どこかで動かなくなる事態に直面するだろう。  こうしたトラブルに出くわした時、階層化し、モジュール化したここの小さなプロジェクトが、たった1つの大きなプロジェクトを進めるよりも、はるかに重要なのだということに気がつくだろう。  君たちにはプロジェクトをサブプロジェクトに細分化して、個別に評価しながら開発を進め、そして大きなプロジェクトにまとめ上げるという手順を踏んでほしい。

 「人月の神話」という本がある。これは本当に良い本だから、一度読んでみてほしい。IBM 360というプロジェクトに関わった人が書いた本なのだが、このプロジェクトによってIBMは瀕死の状態に陥った。この本には、どんなに女性がたくさんいても、妊娠して出産するには9ヶ月はかかるものだ、というような示唆に富んだ例えが紹介されている。

 プロジェクトマネジメントに対する考え方で、非常に興味深いのは、これがスキルだという考え方だ。君たちの中にはこれから習得するスキルの実習を進めるうちに失敗に直面する人が大多数出てくるだろう。この講座では毎週これらのスキルを体験する実習を進めていく。君たちにはプロジェクトマネジメントをスキルの1つとして明確に意識してほしいと思っている。漠然とやってるだけじゃダメだ。単に作業しにくるだけでは、もったいない。  君たちのプロジェクトを成功させるために、どうやって自分自身をマネジメントするか。これは君たちが習得しようとしているスキルなのだという風に真剣に捉えてほしい。

つづく

講義の目次は【和訳版】FabAcademy 2016からご覧ください。

※この記事はFabAcademy 2016 におけるニール・ガーシェンフェルド教授(MIT)による講義動画をもとに作成しました。正確な訳ではないので間違っていたら指摘いただけるとありがたいです。

 

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