応用固体メカニクス では、僕たちが使う部品を一通り紹介するツアーを始めよう。これはこの講義の中核をなすものであるが、その前に、基本的な原理について説明しておきたい。 このページ( Applied Mechanics of Solids )には、物性に関して、かなり先進的でありつつも、素晴らしい記述がある。 ここから、物性の基礎について見ていこう。
弾性変形と塑性変形そして破断 ここで、ある素材を持っているとしょう。これをプレスしてやると形状ができる。 そしてその時、その素材がどの程度の応力でプレスした時に、どの程度変形するのか観察することができる。(応力歪み曲線) 応力というものは、面積当たりの力だと考えて欲しい。そして、歪みというものは材料がダメージを受けて少しずつ伸びていく状態と捉えることができるだろう。 ●弾性変形 そして、ほとんどの素材は直線状のグラフから始まる。つまり、それは弾性変形しているってことだ。応力をかけると弾性変形する。この領域では、ある素材に応力をかけた時でも、素材は変形するが、元に戻る。 ●塑性変形 そして、応力をさらにかけると線形変化しない領域に到達する。この時、素材はよじれ始め、変形する。その後、もしも荷重を取り除いたとしても元の状態に戻らない領域に到達する。なぜならば、不可逆な変化が始まる領域に足を踏み入れたからだ。この領域では可塑性を利用して形を作ることができる。 ●破断 そして、さらに応力を強めると、ついには素材を破断して失敗してしまう点に到達する。
係数(moduli) ヤング率(Young’s moduli)は縦弾性係数とも呼ばれ、硬さを表す。(訳註:応力歪み曲線の弾性範囲における比例定数) そして、弾性変形から塑性変形に移行する。(訳註:そして、塑性範囲においてヤング率を用いることはできない)
摩擦と剥離 摩擦は明らかに機械に悪影響を与える。剥離は特に悪い。 仮に2つの部品を用いるとしよう。同じ素材からできているもの同士は互いに磨耗する。そうすると、溝の間に小さなダマができてしまう。これはさらに素材を剥離させ、大きな損傷が生じる。 この現象を剥離と呼んでいる。
ヒステリシス ヒステリシスは圧縮・引張の一部に関連する項目だ。ここに応力歪み曲線があるとしよう。そしてとあるメカニズムの中にセットされたロッドとナットがあるとしよう。しかし、セットされたナットは厳密にはセットされたロッドとフィットしてはいない。ある時はある方向に、別の時は逆方向に少しばかりの隙間ができる。そして、ナットの位置はある方向とその逆方向の間で変化する。そして、ヒステリシスはメカニズムの中で悪影響を与える。なぜならば、位置を時間の関数になんかしたくはないからだ。 たわみ たわみ(フレクシャー)に関して、僕は以前にもお話ししたね。機械部品を作る最も興味深い方法のいくつかは小部品を構成させる方法というよりも、たわみを利用するものだ。 構造 構造については、また後ほど話そうと思う。 Force Loops 今紹介している用語のうち、いくつかはよく用いられているだろう。 君たちがフライス盤を持っていて、材料も持っているとしよう。そして、フライス盤と材料を接続する箇所がある。これがForce Loopだ。Force Loopはなるべく最小にしたい。そうすりゃ、変形しない。しかし、どの程度の硬さが必要かはアプリケーションによる。(ツール、材料そして、それらを保持する部位のループを小さくすることで、剛性を高めて、高精度な加工をしよう、という話) そういう意味においても、プラスチックをプリントするという工程とチタンを切削する工程は、非常に異なる。 まず最初に必要となるのは、位置を保持するということだ。 Elastic Averaging Elastic Averaging(しなやかに均す方法)について説明しよう。機械を作る時、ふたつの部品があってちょっとした隙間があるとしよう。もしも、多くの部品と自由度によって拘束した場合、これをElastic Averagingと呼ぶ。位置決めは、部品同士の間に隙間がある時よりも精度良くなる。拘束する箇所を増やすことで、実際に良くなるんだ。
参考: 接触面の誤差を平均化するエラスティック・アベレージング (随時更新中) Kinematic Coupling そして、もうひとつの用語がKinematic Coupling(動的な結合)だ。もしも、2つの部品を精度良く並べたいとき、このように行うと非常に美しい。それは、このようにシンプルな見た目の形状があるとしよう。小さな球体とループがいくつかある。これを置く。 ただ、ぽんと置くだけだ。このメカニカルなたったひとつの解決法は、問題となる全ての拘束条件を満たす。たとえ マイクロメートルレベルの公差のような位置決めが実際に必要となる場面に出くわした場合であってもね。 参考: 正確な位置決めを実現するキネマティック・カップリングとは 今説明した用語は機械の組み立て時に役にたつだろう。 ( つづく )
講義の目次は 【和訳版】FabAcademy 2016 からご覧ください。 ※この記事は FabAcademy 2016 におけるニール・ガーシェンフェルド教授(MIT)による講義動画をもとに作成しました。正確な訳ではないので間違っていたら指摘いただけるとありがたいです。