◉形式知と暗黙知
言葉にならない。でも、知っている。そんな状態の知を暗黙知という。僕たちが、仕事を通して学んできた知識(あるいは、そんな狭い範囲に限ることなく、人生を通じて習得してきた知識・技能)のほとんどは、この暗黙知だったりする。
たとえばヴァイオリニストが、長い修練を通じて習得した技能や表現力などは、言葉に落とし込んでも、それがそのままその言葉を受け取った人に伝わるかといえばそうではない。これをどう伝えるのか。それが重要なのだというのはナレッジマネジメントの項で述べた通りだ。
暗黙知を形式知に置き換える方法としてはSECIモデルというものがある。これは次のようなステップで進められる。
1.共同化(Socialization)
2.表出化(Externalization)
3.連結化(Combination)
4.内面化(Internalization)
たとえば僕は仕事のマニュアルを作成したことがある。一番最初に作ったものは僕の主観が入り込みすぎて、他の人が読んだだけではわからない代物になってしまっていた。これを共同で実際に作業してもらうことで、イメージがつくようになってきた。色々な人に経験してもらうことで、よりわかりやすい表現に改定されていった。これが、共同化のステップだろう。
表出化というのは、共同化よりも高度な次元の変換だと思う。なぜなら暗黙知をコンセプトに置き換えるというのはなかなか難しい作業だからだ。日本人はコンセプトを作り出すのがあまり得意でない、ということはしばしば言われることだ。マニュアルの例で言うと、作業やり方になんらかの法則性を見出すというプロセスがこれにあたるのだろう。
連結化はコンセプト同士のコンビネーションだ。マニュアルから導き出された法則同士を結びつけ、新たな事実を見つけ出すプロセスなので、このレベルの知識は組織内の極秘情報とも言えるだろう。連結化された知識は、組織の強みになるはずだ。
しかし、知識は使わなければ意味がない。共同化、表出化、そして連結化された知識は、様々な方法を通じて組織の構成員に浸透させなければ、組織を強くすることはできない。そのプロセスが内面化だろう。一番わかりやすいのはマニュアル化した知識を組織内で共有することだ。それに限らず、表出化されたり連結化された知識を繰り返し、組織内で共有することが組織の強みになる。内面化された知識はもはや文化といっても良いのかもしれない。
それは他の皆は知らないが君たちだけが知っている隠された真実となるはずだ。