◉CAE④
幻との付き合い方、教えます
CAEの問題点として、入力条件の与え方によって結果が変わると述べたが、相対的な評価を行うことでこの結果をより有効に使用することができるようになるだろう。
というのは、やはり仮想空間における物体は所詮は幻の如き存在なのだということに尽きる。どうしてもシミュレーションの入力条件を現実と同じように、というわけにはいかない。仮にそれができたとしてもスーパーコンピュータでも持ち出して来ない限りは、それを解析するのも難しいだろう。まあ、これはあくまで2017年現在の話で今後どうなるかは分からないが、そういうものなのだということは頭の片隅に置いておいた方が良いと思う。
話がすこし逸れてしまったが、入力条件を現実と合わせることが出来ない以上、解析結果の精度を上げるためにせっせと入力条件を細かく見直して改善していくというアプローチはあまり効率的ではない。CAEの結果はそのものとして受け止めた方が良い。所詮は幻。その結果に右往左往するのは馬鹿らしい。
では、どうこの結果を取り扱えば良いのかというと、僕たちが知りたいのは何かと再び問うことだ。何のために僕たちはCAEを実施したのか。決して解析結果を現実と合わせて喜ぶためではないはずだ。目的は、試作での失敗を予め洗い出してより良い設計に改良することだったのを思い出して欲しい。だから僕たちが見るべきところは色々試した時の傾向なのだ。色々な設計条件のモデルをシミュレーションして、よりよい結果が出る傾向にある設計条件を明らかにする。これが僕たちのやるべきことだ。
イメージしやすいのは、次のやり方だろう。
ひとつのパラメータについていくつかの条件で何通りか試してみれば、そのパラメータについてはどんな影響があるのかを把握できる。ただ、傾向を掴むべきパラメータが多い場合は実験計画法のような手法を使った方が効率的だ。
また、タグチメソッドは品質向上のためにロバストな設計条件を見出す手法だから、CAEの時点でこのやり方を取り入れるのは大きな効果を生み出すのではないかと思う。
これが幻を使いこなすためのヒントその一だ。でも、これだけじゃない。まだ幻を幻として捉え、現実に反映させる術があるのだ。
(つづく)