◉CAE⑦
地図がない場所で油断してはいけない
全く知らない土地で、地図も持っていないようなところでも、そこの風景を見ればある程度予想できることもあると思う。たとえば、そこがどこかの地方都市であれば、少なくとも僕たちはコンビニを見つけたり、カフェを見つけたりすることは容易だろうと想像がつく。郊外の国道沿いを走っていれば、全国チェーン店が何かしら見つかるだろうと予想するし、まわりが森林であれば、店は近くにないかもしれないと覚悟を決めることもできる。
それと同じように、CAEの結果とプロトタイプの実験結果の相関関係が示されたデータベースを用いれば、CAEの結果から現実に起こるだろう現象をある程度予想することができるようになるだろう。
でも、忘れないで欲しいのは、あくまで僕たちは地図を持っていないということだ。僕たちが持っているのは残念ながら過去に僕たちが訪れた場所の記録にすぎず、「ここ」の地図ではない。だから何がおきても不思議ではないのだ。これも頭の片隅に置いておいて欲しい。
僕たちはある程度の予想ができる環境にいることは大きなアドバンテージだ。だから、現在地の地図を持っていないということにひるむ必要はない。でも油断は大敵。シミュレーションを行い新しい設計が完成したら、必ずプロトタイプを作製して、その性能を検証して欲しい。たとえある程度の投資が必要であっても、プロトタイピングを抜かしてしまうことはお勧めできない。これ抜きでは、自分が失敗しているのかいないのかさっぱりわからない。たちが悪いのは、自分で成功していると思い込んでドツボにはまることだ。だから必ず試作を忘れないように。これだけは肝に命じていて欲しい。
また、この試作は君たちのデータベースを、より強固にする資産になりうる。だから堂々と投資すれば良いのだ。これはやがて血となり肉となる。前のめりに失敗するにも作法がある。それに気をつけてさえいれば、致命傷は避けることができるもしれない。この記事を参考にして、君たちが自分自身の失敗手法を確立できれば、これほど嬉しいことはない。君自身の失敗道と成功道を極めて欲しい。