僕たちは全てを試せるわけではない
◉CAE⑥
幻との付き合い方について話した時、解析条件のパラメータを降って傾向を見よう、ということを述べた。そのとき、すこしタグチメソッドについて触れたのだが、ちょっとそのことについてここで補足しておきたい。
CAEのおかげで僕たちは色々な条件でシミュレーションを行うことができるようになった。このおかげで試作をせずに色々な知見を得ることが可能となった。でも、シミュレーションのような重い処理はコンピュータでも即席でできるものではない。時間がかかるのだ。実験条件が多くなればなるほど僕たちは前に進めなくなる。前のめりに失敗せよと行っている以上、ここで必要以上に多くの時間をかけてしまうことは本末転倒だ。
そこで時間短縮に一役買うのが実験計画法に基づくタグチメソッドのパラメータ設計の考え方だ。直交表を使って最低限の実験条件で、どのパラメータが安定した性能を出せるか(S/N比が高いか)を見極めれば、どういう試作をするのが良いのか分かりやすい。CAEの結果の傾向を一気に見るためにぜひ取り入れて欲しい手法だ。
何パターンか試作を行う場合もタグチメソッドは有効だろう。とくに試作にはお金がかかるので、条件は絞り込めるだけ絞り込んだほうがいい。CAEで成功したパターンは本当に高い性能を発揮し高い品質を実現できているのかを検証するための必要最低限数の試作に留められれば理想的だ。
こうして、CAEの解析結果の傾向と実験結果の傾向がどのような相関関係を持っているのかを直交表を用いて検証することは、シミュレーショ
ン結果と実験データのデーベース化を進める上でも重要な示唆を与えてくれるに違いない。