「メイカーズがコンカレントエンジニアリングを進めることは可能なのだろうか」というのが僕の疑問だが、いくつか方法はあるだろうと思っている。でも、これはあくまで仮説であって実践の伴う話ではない。実践が伴わなければ役に立つ情報にはならないが、この仮説をもとに試してみれば、それが正しいのか間違っているのか、はたまた「ある条件下ではうまくいく」みたいなノウハウの塊なのかが見えてくるだろう。だから、今は提示するに留めるが、これを試してみる価値はあるのではないかと思う。
とにかく集まる
メイカーズにも、デジタルファブリケーション用の機器を開発する人たちもいることと思う。そういう人たちは、自分もユーザーみたいな状況なのだろうが、他のものを作っているメイカーズとコラボレーションすることは有意義だろう。そうすることで、他のメイカーズがどのような悩みを抱えているのかを知ることができる。そして、より良い機能を実装するための気づきを得られるだろう。こういう交流はオンライン上でも可能だが、やはり情報量が一番多くなるのは一緒に作業するときだろう。ファブラボやテックショップみたいなメイカーズスペースに行けば、コラボレーションできる仲間を見つけられるかもしれない。
また、メイカーズ流アーリーソーシングができれば、その逆もしかりだ。デジタルファブリケーション機器を開発していないメイカーズの方が数は多いだろう。そういう人々はたとえば3Dプリンタの開発者と話をすることで、設計の仕方を変えるなどのチャレンジができる。そうやって智慧の交換を進めることで、個人同士のスキルを高めることができるのだ。これでフロントローディング風な交流を実現する。
集まり方の形
さて、今仮説を立てて書いて見たのだが、いまいちスケール感が小さい気がする。智慧は集めれば集めるほど鋭く研ぎ澄まされる。それなのに今の話では、特定のエリア内の話に止まってしまう。メイカーズスペースでの交流は有用だと思うが、それだけでは物足りない。
同じような取り組みをしている仲間は何も日本だけにいるわけでもない。もちろんシリコンバレーだけにいるのでもない。世界中だ。今やマサイの戦士もインターネットにつながっている時代だ。コラボレーションはどことでもできる。やる気さえあれば。
だから、メイカーズスペース同士をつなげて大きなコミュニティを作ることができればより効率的だ。リアルなつながりとオンライン上のつながりを両方重視することで実現可能なのではないかと思っている。(というか実際にファブラボは世界中と繋がってる)
ただ、やはり物理的な距離が多少の心理的な距離を生み出してしまうのは仕方のないことなのかもしれない。これを解消する術はあるのだろうか?一瞬でどこへでも行ける、どこでもドアがあれば便利なのだが、今の所それを実現できる目処は立っていない。今、できることがあるとしたら、なるべく多くの情報をリアルタイムで取得できるような技術を使うしかないのではないだろうか。たとえばVR技術を使ったテレプレゼンス技術というのはどうだろうか。テレプレゼンスロボットとHMDのコラボレーションだ。理想的には、現場の物体を操作できるようなロボットが好ましいだろう。その様子をHMDやマスタースレーブ越しに感じ取るのだ。そうすれば違う現場に実際に行っているような感覚が得られるだろう。これによってビデオ通話よりも沢山の情報を得ることができるはずだ。ただし今よりもデータの転送量はずっと多くなるだろうし、タイムラグは気持ち悪いので起きないような安定した通信が求められる。あとは、あまり長時間にわたってHMDを装着して作業するのは健康状態に支障をきたすかもしれないので注意が必要だ。
最後はまだ実現されていない技術の話になってしまったが、今でもできることはあるし、これから出来るようになることはたくさんあるはずだ。こういうシステムが出来上がれば、世界中に分散した個人メイカーズのプロジェクトを一括して強力にサポートさるサービスも生まれてくるだろう。
今回は仮説について書いたので、もしかしたら現実とは全然違うことを書いてしまっているかもしれない。これから少しずつ検証していこうと思うので、続報があれば書いてみようと思う。