さて、僕たちはまず何をすれば良いだろうか。まずは僕たちはどこに向かおうとしているのかを知らなければならないだろう。その目的値が書いてあるのは一般的には「中期計画」と呼ばれているものだ。中期計画を達成するにはどうすれば良いか具体的に考えていけば自ずと答えは見えてくる。そして、中期計画の重点取り組み課題がコンカレントエンジニアリングに関連するのであれば、それを選択すれば良い。
だが、僕たちにはそれ以外にも選択肢があることを忘れてはならない。というより、コンカレントエンジニアリングはただの手段にしか過ぎないということを忘れてはいけない。一般的な経営論や戦略論から最適な手法を選び、そこでコンカレントエンジニアリングが最適だという経営判断があってこそはじめて、この手法を選択する意味が出てくる。そのためには、今回の製品開発のキモは何なのか把握しなければならない。
製品開発のキモはどこにあるか。それは時と場合による。一概にこれがキモだということはできない。だから自分たちの場合はどうなのか掘り下げて考えなければならない。
自分たちの目指すべき場所にコンカレントエンジニアリングが必要か否か掘り下げて考える方法として製品のライフサイクルをバリューチェーン(エンジニアリングチェーン)とサプライチェーンに分解して、ライフサイクル全体を見渡すという方法がある。そうすると実に多岐にわたる要素がプロジェクトの成否に関わることがわかるだろう。そして、プロジェクトを構成する色々な役割をもつメンバーたちを招集して話し合うのだ。そこで、キモがどこかの糸口を掴むようにする。
ここで大事なのは、先入観を持たないこと。そして全員が本音で話し合うことだ。話し合っていく上で思いもよらない要素が、プロジェクトのカギとなっている場合もあるからだ。だから、QCDSE全ての視点を持ちつつ、それぞれの実態を表に出さなければならない。そこに次の目的地へのヒントが隠されている。
こうして抽出したプロジェクトのカギはコンカレントエンジニアリングの利点と合致しているだろうか。コンカレントエンジニアリングの利点は開発期間の短縮、QCDSE の大幅改善、そして業務プロセスの改善だ。これに合致しているならコンカレントエンジニアリングを選択する意味がある。
「さあ、これでコンカレントエンジニアリングで行こう」と決めてしまうこともできるが、ちょっと待ってほしい。その前に代替案と比較して、それが効率的なのかどうか考えた方がいい。
開発期間の短縮であれば、社内リソースの集中投資やM&A、技術提携など色んな方法がある。どれが最適なのかは、どれだけリソースを投入するか(IN)とどれだけの成果を得られるか(OUT)を定量的に比較して一番効率の良いものを探してやれば分かる。こういう検討を一通り行ってはじめてコンカレントエンジニアリングが選択されなければならない。
ここまで来たら、君たちは具体的に前に踏み出すことができるはずだ。これからコンカレントエンジニアリングの計画を立てていく。次回はその方法について書こうと思う。