コミュニティという緩やかな組織の中でプロジェクトを立ち上げ、進めるためにはどのような組織が望ましいのだろうか。僕自身はその答えを持ち合わせていないが、仮説を立てることはできるのでちょっと考えていきたい。
プロジェクトの舵を取るのは、やはり発起人だろう。これは想像するのは簡単で、どう考えてもプロジェクト初期には発起人本人の頑張りが不可欠で、最初からチームを組んでいない限りひとりで進めなければならない。それでもプロジェクトを推進したいという情熱です動き始めるのだ。
もし君がプロジェクトを始動するのであれば、リーダーは君だし、すべての裁量はきみに託されている。そしてすべての責任も君が負うことになる。
そして、少し時間が流れ、初めてのプロトタイプが完成し、それを発表したとしよう。インターネットを介して、それを見た人たちの中には君のやろうとしていることに賛同する人も出てくるだろう。必ずというわけではないが、君が何かワクワクさせられるものを作り上げることができるのであれば、それは可能なことだ。そして、のんとなくゆるい組織でつながりながらゆっくりとプロジェクトは拡散していく。君がオープンソースでプロジェクトを進めていくのであれば、それを改変して新しいプロジェクトが生まれることもあるだろう。ギャグに君のプロジェクトは先人の影響を受けたものかもしれない。
自分のプロジェクトから派生プロジェクトが生まれるのはすこし嬉しいと感じるかもしれないし、寂しいと感じるかもしれない。感じ方は人それぞれだと思うが、プロジェクトはこうやって派生していきながらどんどん進化していく。あるものは急激に形態を変えていくだろう。そしてあるものはゆっくりと進んでいく。まるで生物の進化の過程を見ているようだ。こうやってきみのプロジェクトは君の意思には関わらず、色んな方向に進んでいく。
という風に書いているうちに、メイカーズ的コンカレントエンジニアリングはどこに行けば良いのかを見失ってしまったような気がする。というのは、先程書いた事象は全部、モノの開発に関わる部分で起きることだからだ。ただメイカーズ的な開発・設計は、大企業とは違う意味で「同時並行的」といえる。違うプロジェクトが並行して同じような方向に進んでいくからだ。そしてそのプロジェクトがオープンソースである限りは、その成果は互いに共有される。つまり、プロジェクト同士も智慧の貸し借りができる状態にはあるのだ。
そこでは従来の三現主義やFace to face以外のコミュニケーションの方法がとられることが多い。もちろんメイカーズスペースやメイカーズフェアに行けば直接のコミュニケーションは可能なのだが、プロジェクトは世界中に分散してしまっていることが多い。その場合、直接のコミュニケーションはコストが高いし現実的ではない。それ故に、直接コミュニケーションを取るのと同じくらいの情報量を遠隔地に伝達できる技術が重要なのだ。それは、叡智の集結をより円滑にするだろう。
このような、仮想Face to faceや仮想三現主義が可能になれば、メイカーズ的なものづくりの可能性はさらに広がるだろう。
試行錯誤は続く。