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聖域を創る改革

ahedgehogchase

 スティーブ・ジョブズがMacintoshの開発を指揮したとき、従来の研究開発部隊とは別に部隊を用意したという。なぜ、彼はこんなことをしたのだろうか。その疑問に彼はこう答えたという。「海軍に入るより、海賊になる方が良いじゃないか」

 これは従来の会社の官僚機構から、特別部隊を隔離するということだ。聖域なきなき改革とはよく聞く言葉だが、敢えて聖域をつくるのが、このやり方だ。聖域をつくってはいけないという固定概念の牙城を崩す、聖域なき改革だ。(ややこしい表現だ。)

 隔離するのにはもちろん理由がある。それは、イノベーションの海賊部隊をつくることで、メンバーが隔離されると、各々の興味を追求できる自由が得られるからだ。自由は、君の仲間たちに自律性と専門性そして、なぜミッションをやり遂げなければならないのかという目的意識を涵養する。個人の価値観が、組織のミッションに合致したとき、君の組織は最強になる。

 だから、君のプロジェクトメンバーをひとつの大部屋に押し込んで、隔離しよう。そこには製品開発、品質保証、生産技術などQCDSEの向上に関する知識を持った専門家を集めよう。こうやって、もともと部門という官僚機構に縛られていたメンバーたちを解放するとともに、ひとつの場所に閉じ込めてしまうのだ。こういうやり方をスカンクワークスという。

 それぞれが異なる専門性を持つ組織だ。用語ひとつとっても共通理解ができているのか、という視点は大切だ。そして、情報共有のために資料は印刷して壁に貼るなどの工夫をしてみても良いだろう。コミュニケーションを円滑にするためのあらゆる手段を試してみることだ。

 World Wide Webによって世界中がつながる時代だ。デジタル空間に大部屋を構築して、スカンクワークスを進めたいと考える人達もいるだろう。でも、まだ現場の空気感までを伝えられるまでには至っていないのではないかと僕は思う。少なくとも実用化し普及している技術に関して言えば、情報技術はその段階にいない。

 空気感まで伝えられるデバイスがえれば、シリコンバレーなどのテクノロジーのハブから世界中にバーチャルなスポークが形成されるだろう。その時代に突入すれば、デジタルスカンクワークスも不可能ではなくなる。僕はそう感じている。

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