◉DFAとDFM
君が自分の理想を詰め込んだ製品を作り出そうとするとき、最初に実現すべきことは、それが狙い通りの性能を示すことだ。だが、それが普及するかどうかの指標は性能だけでないだろう。安価であるということは、それだけで消費者の選択肢を広げる。だから性能とコストはいつでも最適解に落とし込まなければならない。
では、コストを削減するために最適な形状というのはどうやって決定すべきなのか。これは組立性評価法(DFA: design for assembly )や製造性評価法(DFM:design for manufactureing)という手法で評価することができる。
DFAの目指すところは部品点数の削減だ。部品の形状や部品同士の結合方法を点数化して評価する。
しかし、こうやって部品点数を削減していくと、部品形状が複雑になっていく。部品の複雑化によるコスト上昇を抑制するのがDFMだ。この手法では切削性や溶接性といった加工のしやすさを評価していく。
このふたつの手法から、僕たちは最適な形状を割り出すことができる。ふたつの手法から試算した最低コストが、君の製品にとって最も適した形状だ。
追記)Dragon InovationのWebページにDFMの詳細な解説記事が掲載されている。どんな記事があるのかはこちらを参考にしてほしい。
◉環境への配慮も忘れずに
だが、近年評価すべき項目は増加している。QCDSEのそれぞれの項目を見ていくと、分解性(DFD: design for disassembly )や、環境への影響を評価する手法(DFE: design for environment)の重要性が増してきている。DFEのことを環境配慮設計と呼ぶこともある。DFDへの取組ははDFEを実現する手段のひとつと捉えることもできる。なぜなら、分解のしやすさはリサイクルのしやすさにつながるからだ。また、DFDとDFAは表裏一体の関係でもある。ただし、組み立てやすいが分解しやすいという構造(カシメなど)もあるので、それらの関係性をまとめてみるのも面白いかもしれない。
◉普遍的な最適解などない
実はこれらの手法を用いたときでも、本当の最適解は君にしかわからない。何に重きを置くのかは、君の組織が決定することだからだ。最適解は目指すところによって変化するのだ。
話を少し戻すが、DFAやDFMの最適解についても、組織の強みが反映される。なぜなら、どのような製造方法が得意かは、その組織によって異なるからだ。だからDFMで用いられる加工法の評価は、組織ごとに点数を設定して行わなければ、効果を最大限に発揮できない。だから、これらの評価法を導入することは、自分の組織の力量を見つめ直す機会にもなる。これを機に自分の強みを見つめ直してほしい。
◉運用方法はいつだって大事なんだ
さて、こういう指摘事項というのは生産技術部門から提示されることが多いのが常だ。でも、設計者が設計ルールを標準化している組織もある。コンカレントエンジニアリングを効率的に行おうとしたときには、こうしたルールが威力を発揮する。指摘される前に対策しておく。それが望ましい姿だ。簡単なことではないだろう。でも、地道に取り組むことで、組織を今よりも効率的に動かしていけるはずだ。
*蛇足だが、ルールはなぜ決められたかということは、常に意識されるべきだ。形骸化したルールほど無意味なものはない。つねに、ルールの存在意義を考え、必要の無くなったルールを廃止する勇気を僕たちは持たなければならない。