◉原価企画活動
コスト決定曲線という恐ろしいものがある。それは一言で言うと「企画や設計でコストの80%が決まる」ということを示すものだ。逆に言うと、仕様が決まっていない、つまり設計が固まっていないという状態はコストダウンポテンシャルが高いとも言える。だから、この時期は大事だ。その段階で作り込みを行うかどうかが、コストダウンが可能か否かの分かれ目になる。
では、コストダウンを行うにはどうすればいいのだろうか。
まず、決定しなければならないのが許容原価だ。許容原価は目標売価(顧客に買ってもらえる)から目標利益を差し引いたものだ。目指すべきはこの価格だ。ここを目指して、仕様の策定や設計を進めていこう。
また、設計を進めていく上でコストを意識するにはバリューエンジニアリングの考え方を適用していくといいだろう。バリューエンジニアリングでは価値を次のように定義する。
価値=機能÷コスト
旧来、日本企業では企画、開発、生産技術で共同で価値が高まるようにアイディア出しを行うということがあった。このような活動を原価企画活動と呼ぶ。それを、アメリカ研究者が日本企業のこのような取り組みを見て、コンカレントエンジニアリングと定義したという経緯もある。原価企画活動はコンカレントエンジニアリングの先祖みたいな活動だったのだ。
フロントローディングを行うにあたって、原価企画活動を同時並行で進める。つまり、バリューエンジニアリングの視点を持って企画や設計を進めていくのだ。これによってよりコストパフォーマンスの高い製品設計が可能となり、コストダウンできるようになる。
原価は管理会計の対象なので、管理指標をフル動員する必要がある。たとえば、損益分岐点を下げたり、ライフサイクルコストを下げるなどの検討も必要だ。これはエンジニアリングの領域の話ではない。でも、やはりコンカレントと銘打って活動している以上は、無視して通れない道だ。
また、マテリアルフローコスト会計という概念もでてきている。これは製品にならない材料を削減して、原価を下げることと環境負荷を低減することを実現するというものだ。コストダウンと一緒に環境負荷も考える一石二鳥の考え方だ。
このように、コストを意識したフロントローディングがコンカレントエンジニアリングを一歩先に進める。だから、設計の時に今一度立ち止まって、価値について考えてみてはいかがだろうか。