◉形状の標準化の進め方
目的に注目することで、どの形状を標準化すべきかの方針を立てることができたとしよう。では、何から着手すべきか。それは使用頻度の高い形状はどれかを明確にすることだ。これにより、どの形状が優先されるかが決まる。 そして、優先度の高い形状は前回も述べた通り、色んな流儀で作られているはずだ。さて、どの形状に統一したものか。それぞれの流儀でつくられた形状には、もちろんひとつひとつに設計意図がある。設計思想の優先順位が、設計者ごとに異なることにより、この形状の違いは生じる。だから、それぞれの形状には長所があるし、それと同じく短所もある。どうやって絞り込むべきかは、君の組織が何を目指しているかにかかっている。形状は戦略に従う。外観品位を優先するのか、それとも剛性を優先するのか、メリハリをつけなければならないだろう。最終候補に絞り込んだが、ひとつには決められないという局面もあるだろう。そのような場合には、なぜその形状を残したのかという理由が記されていなければならない。そして、この理由が残されていなければ、後継者に意図を伝えることが出来なくなってしまう。だから、形状の絞り込みの理由、形状の長所、そして短所を記録しておくことは必須だ。とくに不具合の情報は重要で、このような情報と形状が紐付けされていることは、ものづくりの競争力向上に役立つはずだ。 ひとつ、留意しておいて欲しいのは、ここで絞り込んだ形状を手放す時が来るかもしれないということだ。先ほど、形状は戦略に従うと書いたが、この戦略が変更された時にこそ、標準化した形状の変更が実施されるべきときだ。基本的に、組織はクレドに従うだろうが、その下位概念である中期計画はクレドの範疇で変更されるということはあるだろう。そのような場合には、その計画に従って、標準化した形状の見なおしをしていくことが必要だろう。もっとも、モジュール化という手法自体が戦略的なのだが、その他の戦略的要素との絡み合いが重要ということだ。 神は細部に宿るという表現があるが、まさしくその通りだ。この小さな形状にも君の組織の戦略が込められる。そう考えると、もう一段まとまった形の部品や、モジュール、そして最終製品に理想を詰め込む第一歩なのだという漢字がするだろう。作業は地味かもしれないが、君の目的地への一里塚が、形状の標準化なのかもしれない。