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どこでもドアを作るなら、今しかない

ahedgehogchase

◉もう船は出航してしまっている

アレックス・キップマンのTED Talkを見て、僕はこう思ったんだ。「どこでもドアを作るなら、今しかない」ってね。いや、実際もう出来上がりつつあるんだ。キップマンのHololensのデモを見ると、もうどこでもドアは存在しているようにも思える。でも、「どこでもドア」と名乗るにはこれだけじゃ足りない。キップマンのプレゼンで言えば、ホログラムとして参加したジェフェリー・ノリス博士はキップマンの空間で物理的な作用を及ぼすことができないからだ。僕が目指しているところは、あくまで「ものづくり」に直結するレベルだ。そういう意味で、テレプレゼンスはAR(Augumented Reality)だけでは成立しないのだ。

 テレプレゼンスはAR(もしくはVR) + Roboticsの融合で完成すると僕は思っている。きっと、このことに気づいている人は何人もいるはずだ。羅針盤の指している方向は明らかで、そちらに向かえばいいというのは分かっている。でも、誰も海図を持っているわけじゃない。何が最適なルートなのか手探りの状態だ。そもそも、最適って何なんだろう?

 結論を言ってしまえば、そんなものは作ってみないとわからない。「なんて乱暴な」、と思うかもしれないが、実際そうなのだ。それでも、羅針盤の方向を目指して漕ぎ出す船団が、航海を進めていくためにはこじつけでもいいから進むべき航路を決めなければならない。そして、その航路の決定は、「なぜ、どこでもドアなのか」という問いに答える形でなされる。僕の場合は「新しい時代のものづくりを推進する」ために必要な航路を設定してやることになる。そして、羅針盤の指す方向は同じでも、「なぜ、どこでもドアなのか」というモチベーションはみんな違うはずだ。

 モチベーションが違うのだから、出来上がるものは当然違ってくる。設計の優先順位が異なるからだ。何でもあり、という解もあるのだろうが、「どこでもドア的なテレプレゼンス技術」のような、よく分からない製品のコンセプトがぼやけるだけだ。面白いオモチャにはなるかもしれないが、市場に切り込むにはあまりにも貧弱な発想だ。よく分からないものが市場に食い込むには、それなりに尖っていなければならない。それなりに尖らせるには確固たる設計思想を持ち、仕様の優先順位を明確化しなければならない。その仕様を満たし、市場に投入した段階でさえも、それは検証の始まりにしかすぎない。そのアイディアが多くの人に受け入れられるかどうか。結局はそこがキモなのだ。

 だから、各々が自分の信じる「どこでもドア」を作り上げ、市場に問う。そして、市場によって淘汰され、「未来」は確定する。(確定した瞬間、もう未来ではないが)僕が目指すようなものづくりに適用できるテレプレゼンスなんて必要ないという可能性もあるのだ。確かに、そこに需要を感じている人はそんなにいないような気もする。少なくとも、今の所は。それでも、そこに僕は価値を見出しているし、きっと僕だけじゃないと思っている。もしかしたら、テレプレゼンスという技術だけではなく、ものづくりに特化したテレプレゼンスシステムの方が重要なのかもしれない。もしも、そうならば僕の目的意識はそちらの方を志向しているので、そういう方向転換はあり得るだろう。何度もいうが、海図はないからだ。羅針盤の方角の精度をどれだけ高められるかも重要になってくるだろう。そして、今がその時だ。

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