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FRPを用いた製品設計

ahedgehogchase

 僕たちが、設計を進める上でのオプションはどんどん広がっている。材料もその一つだ。複合材料という選択肢が増えたことで、製品の機能は向上した。複合材料の代表格であるFRPは高強度、軽量化を実現するための選択肢として、航空機や自転車、スポーツ用品など色々な製品に用いられている。今日はそんなFRPについて考えていく。

 

1-1 機械設計【選択科目II】(平成28年)

II-2-2 様々な機械製品について、軽量化を目的に繊維強化プラスチック(FRP)活用の動きが活発化している。FRPを活用した製品開発の責任者として、機械設計の観点から下記の内容について記述せよ。

(1)開発する製品例を1つ挙げ、FRPの特性を考慮して、設計において検討すべき事項を多面的に述べよ。

(2)(1)の事項のうち1つについて、具体的に業務を進める手順を述べよ。

(3)(2)の業務を進める上で留意すべき事項を述べよ。

 

【解答例草稿】

◉FRPを用いた製品設計

1. FRPを用いた設計において検討すべき事項

 まず、ロボットの外装部品にFRPを用いる際に検討すべき事項を述べる。

1.1 材料選択(材料設計)

 FRPの特性は以下に述べる多様な要素の組み合わせによって得られる。その要素としては、①繊維の種類(炭素、ガラス)、②繊維の混入方法、③マトリックス樹脂の種類(熱硬化性、熱可塑性)④プリプレグの積層方法(成形方法)などが挙げられる。このような多様な要素の組み合わせは膨大であるため、統一された規格が存在しない。そのため、設計者は多様な選択肢から製品(ここではロボット)に適した材料を選定しなければならない。場合によっては、材料設計を行わなければならない場合もある。そのためFRPは、素材というよりは機能を有した部品と捉えたほうが本質的だと言える。

1.2 異方性

 FRPは繊維の補強方向によって特性が異なる。すなわち、繊維の繊維方向への引っ張りには強いが、繊維方向と垂直な方向に対する引っ張りに弱い。この特性は1.1材料設計の項目の②繊維の混入方法と④プリプレグの積層方法などを決定する際に重要である。

1.3 荷重方向

FRPは繊維で弾性率を強化している。しかし、繊維であるため引張り方向に比べて圧縮方向の強度は弱い。そのため、マトリックス樹脂の特性が大きく影響する。ロボットの外装に用いる場合は圧縮力のかからない構造に設計する必要がある。

1.3 リサイクル性

 持続可能な製品開発のためには、FRP外装部品のリサイクルは重要である。しかし、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂として選定した場合、ほとんどが埋め立て処分されている。リサイクル性という点では、熱可塑性樹脂を選定したほうが有利である。

2. 材料選択(設計)の進め方

 目的とする製品に合致する材料を選択するためには、次の手順で業務を推進するのが望ましい。

A. 製品仕様の優先順位をもとにFRPに求められる機能を明確にする。

B. 候補となる材料の候補を選定する。

C. 候補となる材料を用いてCAE、試作品の評価を実施し、材料を決定する。

 たとえば、ロボット外装部品のデザイン性を優先するのであれば、成形の容易な構成のプリプレグを選定するなどの要素を考慮して候補を選定していく。

3.業務上の留意点

 候補となる材料の絞り込みのためには、1.1で列挙した要素を検討し、その関連性を把握する必要がある。しかし、要素が多様であるため、効率化に留意しなければ膨大なコストと時間を費やすことになる。そこで、直交表を用いたパラメータ設計を実施することを提案する。直交表に各要素を割り付け、CAE, 試作評価の際に最もSN比の高いものを選定する。CAEで一時絞り込みをかけ、試作評価で最終候補を選択するという手順を踏めば、コストと時間を最小限にして効果的な材料選択が可能となる。

以上。

 

 またもや、字数制限を気にせず書いてしまった。今後、無駄をそぎ落とすことを意識してブラッシュアップさせていく。

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