以前、DFAやDFMについて紹介したことがあるが、今回はその仲間のひとつ、DFEについてだ。これも、なかなか奥の深いものなので、少しずつ理解を深めて行ってほしい。
1-1 機械設計【選択科目II】(平成27年) II-2-1 製品の環境に関わる法規制がグローバルに広がる現在、設計段階において3R(Reduce, Reuse, Recycle)に加えて環境配慮設計が多面的に、より一層求められるようになった。あなたが新製品開発チームの担当責任者として業務を進めるに当たり、以下の問いに答えよ。 (1)環境配慮設計において、3Rの他に検討すべき項目を二つ挙げよ。 (2)3R及び上記で挙げた2つの項目に対して、それぞれ具体的な取り組み内容を述べよ。 (3)(2)で挙げた3つの取組を進める際に留意すべき事項を述べよ。
【解答例草稿】 ◉環境配慮設計(DFE) 1. DFEにおける検討事項 環境配慮設計(DFE: Design for Environment)とは製品のライフサイクル全般にわたり、環境への影響を配慮した設計のことである。DFEの取り組みとしては3Rへの取り組み以外にも、製品資源の減量化や製品の長寿命化などの取り組みなどが挙げられる。 2.取り組み内容の例 ここでは、遠隔移動ロボットを製品例として、具体的な取り組み内容を述べる。 2.1 3Rの取り組みとしては分解性と識別性が重要である。ロボットには金属部品や樹脂部品が用いられるが、これらの部品は数種類の材料が用いられている場合が多い。そのため、材料ごとに分解しやすい構造を検討する必要がある。また、分解した部品の材料が識別できるように、マーキングするなどの取り組みが重要である。樹脂部品などはISO14001を参考にすると良い。 2.2 製品資源の減量化に関しては、2つの効果が見込める。一つ目は、資源自体の使用量削減。二つ目は、軽量化によるエネルギー効率向上である。特に遠隔移動ロボットは、駆動に対する消費電力が大きいため、軽量化によりその削減の効果を定量化することができる。具体的な取り組みとしては、構造部材をCAEにより最適な強度に設計することが挙げられる。とくに、トポロジー最適化などのAI(人工頭脳)技術を用いれば、材料の使用量を最小にしつつ、強度を保つことが可能になる。 2.3 製品の長寿命化については、デジタルツインによる故障検知により実施する。デジタルツインとは、実際の製品に数多くのセンサを組み込み、個々の製品から得られるセンサの情報をもとに、AIが製品と同じ状態のモデルを仮想空間に構築したものである。このデジタルツインは個体ごとに構築される。これにより、メンテナンスが必要な部品を適切なタイミングで検知できるため、過剰なメンテナンスを実施することなく、製品の長寿命化が可能となる。 3.取組を推進する際の留意点 3.1 分解性と識別性の向上の際に留意すべき点は、分解性や識別性を向上させても、複合材料や特殊な材料はリサイクルができない場合が多いということである。また、樹脂であれば、熱硬化性樹脂よりも熱可塑性樹脂の方がリサイクルしやすいなどの点にも留意したい。 3.2 トポロジー最適化による製品資源の減量に関しては、生成されるモデルが複雑な場合があることに留意すべきである。そのため選択する工法によっては資源の削減にはならない場合がある。切削加工では、部品を削り出すため、廃棄される部位が発生してしまう。そのため、トポロジー最適化による生成モデルを単純化して、廃棄する部位を最小化できるような工夫が必要である。また、3Dプリンタなどの積層工法を選択すれば、製造時の廃棄ロスは抑制できる。 3.3 デジタルツインによる長寿命化に関しては、センサの搭載量のバランスが重要である。センサ量が少なければ、故障に関する情報が不足し、長寿命化ができない可能性が高い。また、過剰にセンサを搭載した場合は、製品構造が複雑化し、リサイクルしにくくなる上に、コストアップ要因となる。 以上。
【勝手に講評】
例のごとく文字数が多い。もっと、密度の高い文章にするべき。また、デジタルツインやらトポロジー最適化につなげて行く際のロジックをもっと明確にした方がいい。必然がそこにあるのか、と問いかける姿勢を忘れてはならない。さらにブラッシュアップをかけて、より完成度の高い答案に仕上げてほしい。