回路製作の王道
回路基板を作るにあたって、工業的に最も一般的な方法を紹介しよう。それはエッチングだ。フォトリソグラフィー(感光性の物質を塗布した物質の表面を、パターン状に露光することで、露光された部分と露光されていない部分からなる部分を生成する技術)を行うんだ。この方法では、フォトレジストを使って、パターンを描画する。 これを趣味でやる場合はトナーを転写するんだ。君たちはこうやってエッチングを行う。化学的なエッチングだ。一般的に用いられるのは、塩化鉄(II)や塩化銅などの過塩素酸塩を使ったやり方だ。もうちょっと良い(環境に優しい)感じなのは過硫酸塩を使う方法だ。 これは、Material Safety Datasheetへのリンクだ。これを見れば、化学物質のデータシートを入手することができる。これを元に、必要なデータを調べよう。例えば、塩化鉄(II)を見てみよう。これは、注意事項満載だ。なぜなら、有害だからだ。データシートを見てみれば、これがものすごく危険なものだということが分かるね。
図. Material Safety Datasheet
図. 塩化鉄(II)のSDSの例
MITみたいな研究機関で、この物質を取り扱うとなると、非常に厳格なプロトコルに則って管理していかなければならない。このようなエッチングに用いられる物質からは多くの害がもたらされる。例えば、これらの物質を排水口に垂れ流しにしようものなら、ひどいことが起きるだろう。もし、そんなことをすれば君は非難の対象になるどころの騒ぎではない。これらの物質は環境に害悪をなす物質でもあるんだ。
だから、防衛手段を考えておかなければならない。廃棄物の処理には注意をいくら払っても、払い過ぎることなんてない。愛好家が、エッチングの廃棄物を適当に処分してしまうと、環境に様々な害悪がもたらされる。 ポルトガルにおいては、塩化鉄(II)は使用が認められていない。現在では個人的な利用には、ナトリウム化合物が使われる。スペインにおいても、同じことが言える。いずれにせよ、ポルトガルではこの物質を使用することは違法なんだ。まだ、硫化物を使った方が塩化物を使うよりマシだ。 しかし、ここで言っておくが、僕はこれらの物質の使い方を教えるつもりはない。理由は2つある。ひとつは、解像度に関する問題だ。そしてもうひとつはバッチプロセスに関する問題があるからだ。 端的に言うと、僕がこの講義で君たちに教えようとしているのは、マシニングによる回路基板の製作方法なんだ。
(つづく)
講義の目次は【和訳版】FabAcademy 2016からご覧ください。
※この記事はFabAcademy 2016 におけるニール・ガーシェンフェルド教授(MIT)による講義動画をもとに作成しました。正確な訳ではないので間違っていたら指摘いただけるとありがたいです。