機構
さて、ここでついに機構についての説明に移ろうと思う。機構というのはモノを動かす部品の集合体だ。そういうわけで、数多くある機構について見ていこう。 Flexures ここでお見せしているのは、 非常に良い論文 だ。僕は以前にも同じものは、お見せしたことがあると思うのだけれども、少し時間をもらいたい。この項目についてアップデートしたいんだ。これは、単純な切断によってだけで動作システムを作る方法を論じた論文だ。 今見てもらっている部分には、ビームを用いて、flexuresを曲げるという内容が書いてある。そして、これらのビームを他のビームと混合すると、X,Y,Z方向に動かすことができる。 つまり、これはビームによってflexuresを曲げることで実現できる動作プラットフォームシステムなのだ。 この機構の欠点は、動作の範囲に対して構造が大きいということだ。flexuresの動作範囲と物体の大きさは、1:3から1:10程度だ。 その代わりに、この方法では僕がこの講義で説明してきたような部品は何ひとつなく、動作システムはこれらのビームのみによって作られるのだ。そして、これらは非常に静かな機構であり、ヒステリシスはわずかで、スムーズに動く。これらは、例えばマイクロリソグラフィーなどの精密な位置決めに用いられる。 これは動くシステムを作るための非常に面白い方法だ。単にflexuresを作るだけで、僕が説明してきたいかなる部品も使わないのだからね。 オーケー。これがflexuresを用いた機構だ。この機構を使えば、直線運動や回転運動の機構を作ることができるし、その他にも多くの異なる自由度の運動をさせることができるってわけだ。
リンク機構 リンク機構は複数の部品を組み合わせたものだ。これは、素晴らしい Webサイト で、数百年前に遡りながら多くの異なったリンク機構を紹介している。 例えばこれは、ある部品を押して他の部品に動きを伝えるもので、最も便利なもののひとつだ。これらリンク機構の中でも便利な役割を担うのは、今お見せしているように、左右非対称に作ることで、小さな動作を大きな動きに変換することだ。 もしくは、大きな動作から小さな動きに変換することもできる。つまり、動作を増幅させたり減衰させたりすることができるってことだ。
Whippletree Whippletreeは牛か荷車を牽く時に使うものだ。これらが果たす役割は力を均一にすることだ。これらは複数の荷重を扱うことを可能にする。Whippletreeによって荷重は足し合わされ、ひとつの荷重となる。 だから、この機構が行なっていることは、機械的な計算をして力の加算を行なっているようなものなんだ。これが、Whippletreeだ。 パンタグラフ パンタグラフは、そう、リンク機構の項目で説明できれば良かったんだけれども、この機構は入力動作を増幅させたり減衰させたりして出力するのに用いることができる。 Sarrus Sarrusは非常に面白い機構だ。この機構は持ち運びできる大型装置を作るためにデザインされた。 そして、この機構の動作はこのようなものだ。もしも、単純なヒンジを作った場合、そこで2つの面を折ることができる。でも、ヒンジを正しい角度に置くと、拘束され、駆動軸となる。ここでは、ベアリングではなくヒンジを用いているんだ。
そして、この方式の面白いところは、例えばHDPEの板などを皮一枚残してほとんど切削して、正しい方向に捻れば作ることができる点だ。これを折り曲げると、距離が拘束される。そして、これはリバーシブルだ。 そういう訳で、これは切削加工によって作り出された折り曲げ可能なヒンジだ。これらを適切な角度で置くと、ヒンジは軸となり、大きな動作を生み出すシステムになるんだ。 これがSarrusリンク機構だ。 CoreXY Ilan MoyerはNadyaと共にマシンを開発していたこともあるのだけれども、彼はCoreXYと呼ばれる機構を作った。これはその CoreXYのWebページ だ。この機構の機能は、このようなものだ。 ステージを動かしたいときに、しばしばステージ上の重量を減らすということを行うことになる。応答性や加速度などを改善するためにね。 そのためには、このような設計を行う必要がある。そのためには、まず、モータ類を固定する。そしてH型の構造を作る。モータは駆動源となる。これにより2軸の駆動システムを作ることができる。モータは可動部を動かすためにのみ用いられる。だから、これは可動部の重量が最小となる構成のデザインとなるはずだ。そのため、良好な応答性を獲る。 複数のCoreXYを用いれば、3次元的な駆動システムを構築することができる。 これがCoreXYシステムだ。
Hoberman ここからはChuck Hobermanの作品を紹介しよう。オススメだよ。彼は以前ゲストのレクチャーをしてくれたこともあり、ラボの友人であり、機械設計の巨匠だ。 Nadya Peek:今(2016年時点で)、彼はHarvard大学の教授ですよ。 えっ、そうなの?そりゃ、知らなかったな。 ちょっと画像を見てみよう。彼は Hoberman Sphere っていう玩具を作った。これは広がる球体なんだ。しかし、それ以外にも彼は変形することができる大規模な構造物を作った。いくつかの方法を用いることで、全ての自由度は巨大な機構に適用できる。 この機構を用いれば動き、変形する構造を作ることができる。 彼は、まさに機械設計の匠だ。 ( つづく ) 講義の目次は 【和訳版】FabAcademy 2016 からご覧ください。 ※この記事は FabAcademy 2016 におけるニール・ガーシェンフェルド教授(MIT)による講義動画をもとに作成しました。正確な訳ではないので間違っていたら指摘いただけるとありがたいです。