「低い床」と「高い天井」 ツールの民主化という目標に違うことなく、Ilan Moyerは個人が自らのデジタル製作ツールを構築するためのフレームワークを作り出した。 そこで焦点になるのが、モジュール性だ。この考え方は、後にNeil Gershenfeldが取り組むことになるmodsとも共通したものなのではないだろうか。最小限のプログラムで、あらゆる装置を動かしたい。もし、そのようなことができるのであれば、個人的な装置を作り上げるためのハードルは下がる。 これらはSeymour Papertが強調していた「低い床」と「高い天井」を体現したような取り組みなのではないだろうかと僕は思う。そういう意味においても、これらのプロジェクトはMIT(特にメディアラボ)らしいように感じる。 序論2 (以下引用) この論文によって提案された解決策は、個人が彼ら自身のデジタル製作ツールを構築することを可能にするフレームワークだ。著者は、単一の道具が普遍的な製作マシンとして稼働することはできないことを認識している。しかし、道具を作るための道具が道具の無限の生態系の開発を可能にし、したがって同様の効果を持つことが望まれる。ある意味で、ツールはデザインを物理的に表現できる言語を定義する。この言語を自分自身で拡張できるということは、新しいものを設計することができるという自由を部分的に得ることができるということだ。 ここで開発されたフレームワークの背後にある包括的な哲学は、最小の繰り返しの努力で最大のスペクトルの製造機械を実現できるように正しい粒度を提供することを目的としたモジュール性に帰着する。自動化されたツールを構築することに関しては多くの課題があり、それは大まかには力学、制御システム、そしてユーザーインターフェースに分けられる。この論文では、自動化ツールの制御システムとユーザーインターフェイスの側面に焦点を当てている。採用されているアプローチは、仮想マシンがネットワーク経由で実マシンを制御するというものだ。新しい概念ではないが、(工業用の製造ではなく)個人の製造に適用することで、新しい自動化ツールの実装、使用、普及が簡単になる。(ここで紹介するフレームワークは、ブリティッシュコロンビア大学で開発されたシステム(Oldknow&Yellowley、2001)と多くの類似点がある。これは、ネットワークを介して対話する仮想および物理制御モジュールの概念に基づいている。)このアプローチでは、マシンの構成と状態は物理的な制御ハードウェアではなく仮想マシンに格納される。これにより、機械構造のモジュール性が向上し、製造ツールとユーザー作成アプリケーションおよびWebベースのサービスの両方とより密接に連携する新しい機会が生まれる。
このフレームワークは、マスキングテープ上に非繰り返しパターンを連続印刷するための機械、友情の証となるブレスレットを織るための個人用ジャカード織機、DIYコイルワインダー、ポータブルマルチCNCなど、いくつかのツール用の制御システムを短期間で開発することに成功した。これらはツール自身とモータコントローラの分散ネットワークによって駆動されるデスクトップ製造機械だ。 (つづく) 引用:自動化ツールの仮装装置制御のためのゲジュタルトフレームワーク(Ilan Moyer)
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