●プロセスのパイプライン さて、ここからはプロセス全体のパイプラインを見て行こう。 最初に、ちょっと思い出して欲しいんだ。以前、切断工法の話をした時、君たちにジョイントをまず作るように促したよね。その回のプロジェクトに取り掛かる前にね。今回の課題は型をマシニングして、それから成形部品を作って欲しい。 僕はマシニングについて話しておきたいことがある。それは、テストを実施することは重要だということだ。 例えばゴムの添加剤を混ぜたのであれば、テストするんだ。まずは、小さな成形部品を作ろう。本番のプロジェクトに取り掛かる前にこれを行うんだ。こうする理由の1つは、これらの材料には消費期限があるということだ。そして君たちは良い材料のバッチを作ることができたのかを確かめる必要がある。 そして、君たちはプロセスのパイプラインについて理解しておく必要がある。 君たちの大半は、今回の課題をこなすに当たり、型を美しく製作するのに時間を使うことになるだろう。しかし、多くの人たちが型の剥離が必要なことに気がついていない。部品を成形したは良いが、取り出せないんだ。 だから、素材を作るごとにテストを行うべきなんだ。そうやって作った材料を確認していく必要がある。 いいね。 ●混合と気泡 では、第一のステップは混合についてだ。型を作る上で悩みの種となるのが、気泡だ。 ここに気泡がないように慎重に作られたOOMOOの例を示す。(右側) そして、こちらは気泡まみれの杜撰な例だ。(左側) 気泡を除去する方法は多く存在する。君たちが気泡について注意を払って適切に処置すれば、右側の写真のように素晴らしい出来の部品が出来上がる。しかし厄介なのは、適切でない方法で行うと左側の写真のように穴ぼこだらけになるということだ。 気泡防止の1つの方法として、最初に空気を含まないようにするというやり方が挙げられる。 ・混入防止 つまり、これらの材料を混合する際に、スコップで掬い上げるように混ぜると空気をぶち込んでるのと同じようなもんだ。でも、水平に混ぜると空気の混入は防ぐことができる。 そういう訳で、テクニックの一分として、掬うのではなく撹拌するというものが挙げられる。 ・脱気 ほかの方法としては脱気を挙げよう。脱気ってのは、真空チャンバを用意して真空引きするやり方だ。そうすりゃ、気泡を外に出してくれる。 粘度にもよるけれども、振り混ぜることもできる。つまり、混ぜた後に振って混ぜることもできる。そして、このプロセスは少し時間がかかる。 初心者がよく犯す間違いは、徹底的に混合できていないということだ。 OOMOOやウレタンの場合、君たちは混合する必要があるが、内部構造ができてるのはおかしいし、筋が残ってるのはおかしい。五分はかかるよ。君たちが考えている以上に時間はかかるんだ。 もしも、混合が適切に行えなければ、適切な設定ができない。そしてベタベタして汚いものが出来上がる。だから、混合してたとき、空気を混入させないようにするか、真空引きして脱気するかしよう。空気が出てこなくなるには時間がかかる。もう一度言うが、それは数分かかる。焦るとろくなものはできない。早すぎると、泡だらけのものができる。だから、泡が出てこなくなるまで待たなければならない。
ここで、ハイドロストーンとドライストーン に関して触れておくが、これらは粘度が低く、少しかき混ぜると少しずつ気泡が出てくる。 OOMOOも非常に扱い易い。ウレタンは一度気泡が入ってしまうと取り除くのがかなり難しい。 ・混合濃度 OOMOOは1:1でレジンを混合する。 ハイドロストーンやドライストーンは(配合が)細かく指定されている。しかし、僕は濃度を基に混合している。混合した粉体に対して加える水の量が多過ぎたりすると、牛乳みたいにシャバシャバになってしまう。逆に粉体の方が多過ぎたら、注ぎ込むことすらできない。このふたつの状態の間、つまりクリームとシャバシャバなヨーグルトの間の濃度がある。 粉体を水と混合し始めて、クリームっぽく変化してきたら濃度を調整しよう。君たちはその変化が生じた時にそのような感触を得られるだろう。その感触に従えば、広い濃度の範囲でうまくいくんだ。 ・消費期限 そして、これも重要なことなのだけれども、ハイドロストーンやドライストーンには消費期限はなく永遠に使うことができる。しかし、シリコンやウレタンは限られているけれども消費期限がある。開封前であれば、それは一年くらいだろう。そして開封後は数週間だ。だから、開封してから時間のたったものは使わないようにね。 ・作業場所 そして、開封して使用する際に、非常に重要なことは、容器の縁で混ぜるようなことはしてはならない。これは初心者がやりがちなミスだ。実際に混合を行う時には、容器は清浄にしておく必要がある。 容器の縁で混ぜたりしてはいけない。二度と容器を開けられなくなるよ。
・注型
まとめると、混合は慎重にやろうってことだ。空気が中に入らないようね!
そして、それを流し込む。流し込む時の裏ワザのひとつとして、ものすごく細く注ぎ込むっていうのがある。それによって気泡を取り除くことができる。なぜならば、型に到達するまでに気泡が抜けるからだ。 注ぎ方には思考が要求されるものだ。つまり、このような見た目の型があるとしよう。2部品の型だ。こんな見た目のね。 君たちは何も考えずに注ぎ始めるだろう。それの何がいけないのかというと、上部の表面に衝撃を与えてしまうんだよね。単体として見たときに、形状が不均一になる。 一般的に望ましいのは、型に対して傾斜をつけるやり方だ。 ここで君たちが何を成形しようとも、次のような表面になるようにするのが望ましい。それは、上部の表面まで注入するときに、一箇所から注ぎ込まれるようにするってことだ。この場所は材料を注ぎ込むにしたがって移動する。ここで、覚えておいて欲しいのが、終端に穴を設けておくということだ。
要するに、レジンを注ぎ込む場所は一箇所とし、君が一番高い場所の表層部では、成形箇所の外部となる場所を設けるんだ。表層が連続的になるように境界面を徐々に上げていって欲しい。 同様に、レジンを単にぶち込むようなことはしないで欲しい。十分にゆっくりと注ぎ込んでくれたまえ。注ぎ込んだ材料が型に広がる時間を取るんだ。 こういう配慮を行わなかった場合には、結局のところ空気が型の中に入り込んでしまうんだ。だから、君たちにはどこに材料を注ぎ込み、どこに逃げ穴を設けるかを考えて欲しいんだ。 ・脱気(再び) そして、必ずと言っていいほど初心者ってのは、やり始めた途端に泡を噛み込むもんだ。 だから、これらの気泡を除去する方法として挙げられるのが、振動を用いる方法だ。揺らそう。 他にも減圧するやり方もある。そしてもう1つのやり方は、単に注ぎ込むのではなく、加圧下で型に材料を導入するという方法が実際にある。これは気泡を押しつぶしてしまう。 ・注型(再び) もう一度説明しよう。型をフラットにした場合、大きな塊ができて空気を巻き込んでしまう。望ましいのは、型に傾斜をつけて境界面ができるようにする。型の中を満たすにつれ、連続的な境界線ができあがる。型の壁を上がってきて、型の一番高い地点に差し掛かる。ここで逃げ穴を設けておくんだ。連続的な境界面を得たい。そこではレジンが上がってくるように注ぎ込まれる。 平らな表面に衝撃を与えるようなやり方はしたくないだろう。だって、いくらか衝撃を受けてしまったら、もしくは、適切に一様な衝撃を与えることができなければ、その境界面に気泡ができてしまう。 ・硬化 さて、ここからは硬化に関してだ。 OOMOOは室温で硬化する。 ウレタンの重合はわずかに高温を要する。対流のあるトースターのような環境が必要だ。 ハイドロストーンとドライストーンは水和反応が必要だ。 これらの材料のほとんどは放熱性がある。これらは反応時に熱を放出する。事実、反応する材料の量が多くなると熱も大量に放出される。この場合、実際には冷却を行う。 ハイドロストーンとドライストーンは15分でもまだ注型可能な状態だ。そして30分から45分の間に、発熱し始める。この熱は硬化が始まった証だ。そして1時間もすれば、温度が下がり始める。一旦、冷却されると離型できなくなる。強度はまだ完全ではないけれどもね。完全な強度を得るまではさらにいくらか時間がかかる。
しかし、ドライストーンは離型が可能だ。硬化させるのにも、特に何かする必要はない。ドライストーンは完全に内部で硬化するので何もする必要はない。 ハイドロストーンは乾燥させるための助けが少し必要で、オーブンの中で加熱するなどしなくちゃいけない。そうやって余分な水分を除去する。 ・離型 そして、ついに離型について話す時が来た。金型などのリジッドな型において、フラットな面を作製した場合、その部品を離型することはできない。だから、リジッドな型を用いる際には、わずかに面にテーパーを設ける。そうすると例えばレゴブロックのような部品を取り出すことができるようになる。この理由から僕はいつも角度をつけた面を作るようにしている。このような工夫をすることで部品を離型しやすくするんだ。
・離型剤 ここで離型剤について説明しておこう。 これは 離型剤 だ。Smooth-Onで取り扱っている。 これらは成形されたパーツを型から外しやすくするためにデザインされている。特筆すべきことにこれらには特別な例外がある。それは、これはシリコンには使用できないということだ。ウレタンに対して特別な離型として機能するんだ。 巷には多くの離型剤がある。希釈用食器用洗剤は一種の離型剤だ。ワセリンもまた違う種類の離型剤のひとつだ。滑石は良い離型剤だ。DIYなんかで一般的に用いられる。 そういうわけで、君たちはこれらの離型剤も手に入れることができる。 ・消費期限(再び) ここで、もう一度レジンについて気をつけなければならないことについて注意しておこう。開封前の消費期限がある。一年くらい持つのかな。これを開封する。すると開封後の消費期限がある。それは数週間くらいだろうか。 しかし、レジンの使用履歴を把握していなければ、君たちはいつだって疑心暗鬼に囚われてしまうことになるはずだ。だから、成形テストを行い、それらが良い状態なのかどうかを見極めるべきなんだ。 一方で、ハイドロストーンとドライストーンは、使用期限がない。これらに関して特に気を配る必要はない。
・レジン同士の混合
2種類のレジンのひとつの典型例は、内部で複数のパーツシステムにそれらを分割することができる。だから、君たちがやらないといけないのは、これらを別々に混合して、注ぎ込み、さらにこれらを混合するということだ。
(つづく)
講義の目次は 【和訳版】FabAcademy 2016 からご覧ください。
※この記事は FabAcademy 2016 におけるニール・ガーシェンフェルド教授(MIT)による講義動画をもとに作成しました。正確な訳ではないので間違っていたら指摘いただけるとありがたいです。