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音楽の解放とものづくりの未来

ahedgehogchase

◉曲作りとものづくり  音楽作りとものづくりは似たような運命を辿るのかもしれない。 もちろん、音楽と「もの」は、全然違うものだ。何しろ、音楽には形がない。そして、形がないものは形があるものより自由だ。自由なのは音楽が情報だからだ。  もっとも原始的な形で音楽という情報を伝達する方法は、耳コピだ。鼻唄でも良い。でも、情報は曖昧だし、伝達する途中で変わってしまうこともあったはずだ。人間の記憶は柔軟性が高く、精度の高い情報をそのまま伝えることはできない。時代が下ると楽譜という情報伝達手段を人類は手にした。でも、音楽の伝達にはトレーニングが必要だし、作り手の意図を伝えられる人は稀だ。こういう人たちはいわゆるミュージシャンだが、彼等の解釈ひとつで音楽の印象は少なからず変化する。彼等の影響力はオリジナルに様々な情報を加えていく。そして、それを再現することは本人さえ難しいことなのかもしれない。

 次に現れた方法は、オルゴールのように楽譜を機械的な動きに対応した符号で表記する方法だ。この方法は、20世紀後半から現代に生きるミュージシャンの表現の幅を広げるきっかけにもなる。

と言うのも、この技術は打ち込みという音楽の表現方法を生み出したのだ。打ち込みは楽器の演奏が得意でない人にも音楽を作る楽しさを教えてくれる。誰であろうと作曲者がプログラミングした曲をコンピュータが演奏してくれる。もちろん、作り方のノウハウは存在するが、演奏テクニックを持ち合わせていなくても良いのだ。ただし、この方法で伝達できる情報量は必ずしも多くない。

 それとは別の流れで、20世紀には音楽をそのまま記録する技術が次々と生まれた。蓄音機、レコード、CD、そしてmp3という形でどんどん情報を正確に、または伝達しやすい形に進化させていった。この録音の時代に僕たちは、一流の音楽家の演奏をどこでも気楽に楽しむことができる。

 録音は音楽を聴いて楽しむだけでなく、作る楽しみの幅も広げた。マルチトラックレコーダは、重ね録りという方法を可能にした。同じ曲に色々なパートを重ねながら録音していくのだ。この方法を使えば、一人で色々なパートを弾いて曲を完成させることもできる。  そして、打ち込みと録音を同時に扱えるソフトウェアも登場した。今や僕たちはこのようなソフトウェアを、数万円、いや場合によっては無料で手に入れることができるようになっている。そして、このようなソフトウェアでは、録音データを素材として扱うこともできる。録音データは元の文脈を外れ、新しい物語を紡ぐための単なる素材として扱われるようになった。そして、この変化は音楽を新しい次元へと導いたのだ。 次回へつづく

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