家庭にコンピュータが必要になる理由なんてない
ここで、話を戻そう。僕は君たちにコンピュータの黎明期からEメールの時代までの概略を示した。
図. TX-0 (MIT)
MITは TX-0 コンピュータを開発した。それは世界初のトランジスタ製のコンピュータだった。そして初期のコンピュータは digital社 によって PDP として製品化させるようになった。digitalはコンピュータを創り出し、それらのコンピュータはインターネットの世界を生み出すのに一役買った。
図. PDP-1 (digital equipment corporation)
図. Ken Olsenの言葉
この写真に写っているのはdigital社の創業者 Ken Olsen だ。彼の有名な言葉がある。それは「家庭にコンピュータが必要になる理由なんてない」というものだ。そして、digitalは倒産した。失敗したのは彼らだけではない。彼らが倒産したとき、 Data General社 、 Prime Computer社、 WANG社 などのコンピュータ関連企業はボストン近郊のルート128沿いに集積していた。それらの企業は軒並み倒産した。どれだけ彼らがうまく経営していたかなんて関係ない、というくらいに彼らはことごとく失敗した。なぜなら彼らはコンピュータをパーソナルユースに用いるという衝撃的なやり方を採用しなかったからだ。彼らはパーソナルコンピュータなんか作っても、メインフレームやミニコンピュータに敵うはずもないと、たかを括っていた。
でも、ポイントとなるのは君たちは家でコンピュータを何かの目録を作成したり、給与明細を作るためには使わないよね、ってことだ。 それと同じように、何を作るために君たちは何かを作るマシンを所有することになるのだろう。デジタルファブリケーションを考える上でのポイントは単に君たちが店頭で買えるものを作れるようになる事じゃないってことだ。何を作るかっていうと、そりゃ店頭で買えないものだろう。たった1人の人間というマーケットに向けたプロダクトのはずだ。君たちはみんなが同じものを必要としているようなつまらないものを大量生産するのではなく、違うものを必要としている人達のため面白いプロダクトを製造するんだ。
( つづく )
講義の目次は 【和訳版】FabAcademy 2016 からご覧ください。 ※この記事は FabAcademy 2016 におけるニール・ガーシェンフェルド教授(MIT)による講義動画をもとに作成しました。正確な訳ではないので間違っていたら指摘いただけるとありがたいです。