ベクターの書き出し
ワークフローの中で、僕たちのデザインしたものはSVGベクターとしても、ビットマップとしても書き出すことができる。先ほど話したGimpとの違いは、SVGが使えるかどうかだ。ズームしてみよう。すると、好きなだけ拡大できるし、その図形は連続しているだろう。なぜなら 、僕たちがスクリーン上に描いたのは、単なるドットの集まりじゃなく、数学的な形状だからだ。
Inkscapeは無料で入手可能なクロスプラットフォームのベクタードローイングツールだ。なんて素晴らしいツールだ。余談だが、Libre OfficeはMicrosoft Officeと似たようなソフトウェアだ。無料で使えて良い感じだ。これと比較すると、AdobeのIllustratorは商用のドローイングソフトウェアだが、これはまるで商用版Inkscapeみたいなもんだ。
さて、これから話すCADツールは、もっと構造的なドローイングが可能だ。これらのツールについて話した後に、3Dデータの取り扱いについて説明しよう。 君たちに課した最終課題では、ピクセルペイントツール上に作成したスケッチと、それを基にしたベクターで描かれた図面を提出してもらう。こう言うと、このふたつのツールはどちらも必要なものだとお分かりだろう。君たちはドローイングツールを使えるようになった後は、ベクタードローイングツールを使えるようにならないといけないんだ。
色んな3次元ツールを試してみよう さて、ようやく3次元設計に辿り着いた訳だ。すぐに分かることだが、これこら君たちは最終的に10もの異なるCADツールを使うことになる。何でもできる普遍的なCADツールは存在しない。作業場とかやアーティストの作業台はどんな感じか想像して見たまえ。君たちは太い筆から細い筆まで取り揃えているだろう。そして、同じ作品を仕上げる時でも異なる目的に応じてブラシを使い分けるだろう。それと同じで、ひとつのCADツールでは君がやりたいことを残部カバーできない。それに、人には好き嫌いというものがある。正しい答えなんてない。だから、君たちはできるだけ多くのツールにトライする必要があるんだ。
階層的、そしてパラメトリックなデザイン さあ、3Dデザイン、すなわち論理的なブーリアン演算においては、僕たちは所謂、構造的なソリッドの幾何学を扱う。これは、大洋のようなもんだ。ここに部品がある。僕はここに別の部品を加えたり、取り除いたりして、新しい部品を作る。これがCSGと呼ばれる方式だ。でもって、3D CADを扱う時、階層的かつ、パラメトリックに進めたいと思うはずだ。階層的ってのは、言ってみりゃ、まあ、ジャンボジェットみたいなもんだと僕は考えている。で、僕は部品をひとつ持っている。リベットだ。そして、僕はもうちょい大きいリベットを作りたいと思っている。でも、自分のリベットの全てを設計したい訳じゃない。もう一度言おう。リベットを1つ探している。ドローイングして沢山作りたい。階層的というのは、パーツをから他のパーツを作り、さらに、そのパーツから、さらに別のパーツを作るというような階層のことをだ。 パラメトリックというのは、リベット間の空隙の設計だ。こういう空隙はリベットの大きさによって決まるが、もしも全部のリベットを大きく作りすぎた時、これらのリベットは使えない。パラメトリック設計なら、パラメータを入力し直してやれば良い。設計を通して、新しいパラメータを大量に入力して、新しい部品をどんどん生み出していくんだ。こういうやり方をすれば、マウスを動かしてリベットの隙間の値を入力してやすことができる。もしくは、ちょっとしたプログラムでも書いてみて、周りの部品との関係性から自動的にパラメータ設定するようにしても良いだろう。単なるクリックやドラッグじゃなくてね。だから、3次元設計をやろうと思えば、階層的でパラメトリックなデザインができるようにしたいと思うものなんだ。
(つづく)
講義の目次は【和訳版】FabAcademy 2016からご覧ください。
※この記事はFabAcademy 2016 におけるニール・ガーシェンフェルド教授(MIT)による講義動画をもとに作成しました。正確な訳ではないので間違っていたら指摘いただけるとありがたいです。