◉この課題は本当にイシューなのか (イシュードリブンな思考法の練習) 「何はともあれ、言葉にする」ことが大事だと安宅氏は書いている。だから、まずは自分がPROJECT Aに対するスタンスを言葉にしてみようとおもう。 そのためには、僕が何が問題と考えて行動しようとしているのかを明らかにしなければならない。その問題(つまりイシュー)は、まだ漠然としている。朧げに考えているのは次のようなことだ。それを仮に言葉に表してみるとこうなる。 「グローバルなネットワーク上で 、協力してひとつの物理的な(モノ)を作り上げるには、遠隔地での物理的制約を軽減しなければならない。しかし、現実は制約だらけだ。」 では、この問題が本当に良いイシューなのか見ていこう。
1.本質的な選択肢であるか 先ほど挙げた問題点が本質的であるかどうかは、その問題に答えが出た時に何が起こるのかを考えてみれば良い。答えが出た時に、世界に大きな影響を与えるのであれば、この問題は本質的なものと考えて差し支えないだろう。 では、実際に考えてみよう。 1.1 物理的な制約を受けない方法 僕たちが物理的な制約を受けずに、遠隔地で活動できる状態とはどのような状態だろうか。それに一番近い状況は、例えば僕が日本ではなく英国に実際に行って活動するという状況だ。けれども、これを実際に行うには僕は飛行機に乗って国境を越えて現地に行かなければならない。そのためには、高価な航空券を購入し、半日以上飛行機に乗って行かなければならない。つまり、コストと時間がかかるのだ。観光であればそれで良い。ある程度のお金を支払ってゆっくり時間をかけて現地を訪れれば、きっと楽しい時間を過ごすことができるだろう。でも、僕たちが想定しているのは、グローバルなネットワーク上でモノをつくりあげるという場面だ。時間とコストがかからないに越したことはない。だから、大事なのは「コストと時間をかけずに遠隔地で活動できる」ことだ。 現在可能なアプローチは「物理的な制約は受けないが、コストと時間の制約を受ける」状態なのだ。 1.2 コスト、時間の制約を受けない方法 逆に、僕たちは「コストと時間の制約は受けないが、物理的な制約を受ける」手段を選択することが可能だ。それはSkypeだ。しかも、今では同時翻訳機能付きだ。コミュニケーションを行うだけならば、それほど制約がある状態ではないだろう。Skypeに限らず、遠隔地とのテレビ電話システムは、低コストでリアルタイムなコミュニケーションを円滑に進めることを可能にしている。 この技術をビジネスにつなげたのが、オンライン英会話学校だ。このビジネスは、英語学習者とネイティヴスピーカーの教師を結びつけることで、リアルタイムな英会話を練習してより効率的でリアルな英語学習を可能にしている。 1.3 選択肢を広げる 今まで見てきたように、遠隔地で活動をしようとした場合、コストとお金の制約を受ける場合と、物理的な制約を受ける場合がある。この選択肢を広げるにはいくつかの道が考えられる。一つ目は、交通のコストを下げ、高速な移動方法を手に入れる道。もう一つは、現在送信できるよりもより多くの情報を送信して、遠隔地のモノを物理的に作用を加える技術を手に入れる道。そして、残りはテレポーテーションにより、瞬時に人間自身を転送してしまう技術を手に入れることだ。さらに、この技術が低コストで安全に運用されなければならない。最終的には、どこでもドアみたいな技術が普及する可能性があると思っている。(何百年も先の話になるかもしれないが) これらの新しい選択肢の中で、今僕が関わることができるだろうものは二つ目の方法だろう。低コストな技術を、少しずつアップデートしていくことで、目指す機能を手に入れることができるのではないかと考えているからだ。 さて、ここまでは現状分析を行ってみたが、次からはこの問題が解決された時に何が起こるのかを考えてみたい。