組織は戦略に従うというが…
戦略を変更することは比較的簡単だと思う。時代の流れの速いこの時代、うかうかしていたら取り残されてしまう。だから、その時々によって、選択される戦略は変わらねばならない。
10年後に僕達がスマートフォンを触り続けているかなんて、分からない。たぶん、スマートフォンが消滅しているかといえば、していないような気はしている。でも、2017年現在でも、ホームアシスタントと呼ばれる音声ベースのコンピュータも出現しているし時代の流れは確実に変わりつつある。だから、何に重点的に取り組むべきかも変化する。新たなレイヤーが増え、そのレイヤーが今あるレイヤーよりも重要になる。そういうことだ。
この10年で僕達は新しい概念をいくつか手にして来た。かつて、ユビキタスと呼ばれたモバイルコンピューティングの世界をはじめ、シェアリングエコノミーやらクラウドやら、本当に世界の有り様は変わってしまった。それなのに、戦略が不動だなんて考えられない。ポジショニングは大事だというのは昔から経営戦略の世界では叫ばれていたことだ。マイケル・ポーターが散々主張してきたことだ。もちろん彼は正しい。 でも、外部環境がこれはどまでに激しく変わる世界においては、ポジショニングも頻繁に変わらざるを得なくなったのだ。
組織は戦略よりも変更しにくい
かくして、戦略を何度となく練り直すことが必須となったこの時代において、問題となることが出てくる。 それは、戦略の実現のためには組織を変えなければならないということだ。しかし、残念なことに組織を変えることは戦略の変更よりも数段難易度が高い。無理やり組織割りを変えても、人の思いや感情は変えられない。現場は、経営者の気まぐれに付き合わされているようにしか感じないかもしれない。こうして、戦略上最も重要なものを置き去りにしてしまうリスクがあるのが事実だ。 これに対応するには、ひたすら戦略の目的をしつこく繰り返し、理解してもらうしかない。しつこく繰り返す、というのが大事だ。多少カルト的で気持ち悪いくらいがちょうど良い。その気持ち悪さが心地よい人間で組織が構成されれば、組織の転換も比較的受け入れやすいだろう。どのみち、ベストな組織形態なんてない。一長一短なのだ。だから、戦略という行き先を決めて、そこを目指すための優先順位を明らかにし、その優先順位をもとに組織を後世していくのが望ましい。ひょっとしたら、むしろ、理想的な組織のあり方を考えたのちに、行き先である戦略を策定するというのも良いかもしれない。組織の変革は口で言うほど容易くはないだろう。でも、その山さえ動かせれば、何でも動かせるようになるはずだ。 こんな考え方も面白いのではないだろうか。