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理想からの乖離。それを知ることは理想に近づくことだ。①

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タグチメソッド①

 普通に生きているつもりでも、何かと予期せぬトラブルな出会ってしまうのが人生というもの。それはものづくりにも言えることだ。QC的なアプローチを取ることで、僕たちは何かまずいことが起きているときに、それを検知することができる。でも、それだけでは十分ではないだろう。理想は、まずいことは何も起きないという状態にすることだ。未然防止が重要なのだ。

 トラブルを未然に防ぐためには、どのようなアプローチを取るべきだろうか。よく用いられるのは統計学的なアプローチだ。実験計画法という統計学的な手法があるが、それをさらに品質課題の未然防止に特化したのがタグチメソッドだ。これはコストをそのまま抑えながら、製品の信頼性が高くなるように設計する手法だ。勝負は工程を稼働させるまでもなく、設計の時点で決まるのだ。タグチメソッドでは、システムの機能や製品のばらつきを低減する設計を採用することで信頼性を確保するのだ。

 タグチメソッドの基本はふたつ。ロバストデザインとパラメータ設計だ。このふたつの概念について、説明しよう。

 製品を製造すると、色々な個体差が出てくる。寸法は完全に一致することはまずないだろうし、センサの特性もある程度ばらつきがある。(もちろん性能を満たすようにはなっているだろうせれども)使用環境も、ユーザーによって異なるだろうし、そういう変動も製品の寿命に影響する。だから、変動する要因に対して影響を最小化するというのがロバストデザインの基本思想だ。

 まず、設計変数や制約条件を「確定的」なものと「変動的」なものに分類する。これをそれぞれ制御因子とノイズ因子という。ノイズ因子こそが製品の不良に影響する要素だから、僕たちはこれをうまいこと飼いならさなければならない。そのためには、ノイズ因子により理想的な状態からのズレた量を的確に把握する必要がある。理想状態からのズレを評価するのにはS/N比が用いられ、これは欲しい性能値をノイズ因子で割ったものだ。S/N比を用いて、ノイズ因子の影響が最小になる条件を探し出すのだ。

 つぎにパラメータ設計だが、これはロバストデザインを効率的に実施するための設計手法だ。実験計画法で用いられる直交表を利用することで、実験条件を必要最小限に抑えつつ、ノイズ因子が影響する要素を、実験によって明らかにしていくのだ。必要最小限の実験で、品質を向上させるための要点を掴むので、これは開発期間の短縮にもつながる。

 このようにロバストデザインは品質を向上させるだけでなく、設計の効率化を促すので、フロントローディングを進める際にも有効だ。この手法を用いることで、品質を犠牲にせず、短期間開発が可能となるのだ。設計道具として、かなり便利なツールなのだ。

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