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理想からの乖離。それを知ることは理想に近づくことだ③

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タグチメソッド③

 新しいことを取り入れるということは、今までの常識を捨て去る勇気を伴うものだ。慣れ親しんだ考え方というのはなかな捨てがたいものだが、それを乗り越えなければならない。

 タグチメソッドも従来の品質管理の視点から見ると、奇妙な存在に見えるかもしれない。ここには新しい4つの視点がある。最初は慣れないかもしれないが、この考え方を頭に叩き込む必要がある。

原因を追求しても意味がない

 なにか品質問題が起きた時には、原因を色々な角度から分析して、対策を講じることは、普通に行われていることだし、決して間違ったことではない。でも、タグチメソッドを用いた設計では、この考え方を一旦捨て去る必要がある。このことを、念頭に置いてほしい。これがひとつ目の視点だ。

品質とは何か、と再び問う

 原因究明で品質を向上できないとすれば、僕たちは何を目指せばよいのだろうか。僕たちが目指すべきところは品質のはずだ。こう言うと禅問答みたいだが、僕たちは品質について正しく理解しているだろうか。

 品質とは何か。機能を満足に活用できる状態。きれい。壊れにくい。色々あるだろう。でも、こんな言葉を並べても品質の本質にはまだ至っていない。これらの要素は何を表しているだろうか。

 想像してほしい。先ほど列挙した要素は君の組織に何をもたらすだろう?きっと、良いイメージだろう。もし、君がイメージの向上にかなりの力を注いで組織を育て上げていたならば、周りの人々は君のつくるものに好ましい印象を持っているだろう。こういう言い方は、あるいは控えめとも言えるかもしれない。君の友達は君のつくるものに憧れを抱いてさえいるかもしれないのだ。この状態までくれば、もはやそれはブランドと言って良いだろう。

 では、もし一度でも君の設計がイケてないものだったとしたらどうなるだろう。その製品は、ブランドにまで育て上げたものを一気に崩しにかかるかもしれない。あのブランドイメージは幻想だったのだ、と人々は落胆してしまうだろう。

 なんと恐ろしいことだろう。でも、こんなことは全然珍しいことでもなんでもない。品質の欠如は君の組織に致命的なダメージを与えるだろう。品質向上のための対策にも投資が必要になるかもしれない。危険な状態の製品であれば回収しなければならないこともあるだろう。それに留まらず、君の製品は選ばれなくなってしまうだろう。売り上げは一気に落ち込む。いったいどれだけの損失を被っただろうか。と途方にくれるだろう。

 さあ、ここまで想像できたら、一度立ち止まってみよう。たった今、

キーワードが出てきたのだ。もう一度言おう。

「いったいどれだけの損失を被っただろうか?」

 そうだ。品質問題が起これば、その製品を製造している企業は損失を被る。言い換えれば、品質が高ければ、損失を被ることはないのだ。だから、こういう見方もできるだろう。

「品質とは損失を受ける程度が少ない状態」

 損失を受ける程度を定量化するのは簡単だ。損失額を計算すれば良い。品質が悪ければ、損失額は増え、品質が高ければ、損失額は減少するのだ。品質は損失額で評価できる。

 さて、これで僕たちは目的地を設定することができた。あとは、どのようにアプローチするかが重要になってくる。では、損失額を低減させるには、どうすれば良いだろうか。

 得てして損失とは思わぬ時に被るものだ。いつやってくるかも分からない不確定要素だ。不確定ということは一定ではないということだ。常にばらついた要素が悪影響を与え、最終的に目に見える損失として突然姿を現わすのだ。

 だから、僕たちが製品を設計する際には、なるべく不確定要素に強くなるようにしなければならない。不確定要素とは例えば、使用環境であったり、使う人の癖であったり、とにかく色々あるだろう。このような不確定な変動要因(ノイズ)の影響を最小化した設計手法をロバストデザインという。このロバストデザインこそが、タグチメソッドの最重要キーワードのひとつだ。ロバストデザインを用いて、色々な使われ方をしても損失を最小にとどめる。これが2つ目の視点だ。

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